イモなどの粉末を樹脂で固めた偽米を中国がアジア諸国へ輸出した事件以降、プラスチック米に注意するようなSNSの投稿を見かけるようになりました。
ひょっとするとスーパーにもプラスチック米が売ってるのではないか、と不安になってしまいますよね。
結論から言うと、中国で生産されたような偽米が日本に入ってきたという報告はありません。
ですが、
古米を新米のように美味しくする「精米改良剤」という食品添加物には要注意です。
なぜなら、精米改良剤には通称、液体プラスチックとも言われるプロピレングリコールが使用されているから。
プロピレングリコール使用用途
・車などに使う不凍液
・保湿剤などの化粧品
・電子タバコのリキッド
※プロピレングリコールは品質保持など多用途で食品への使用が許可
中国のような明らかな偽物より、「新型プラスチック米」ともいえる精米改良剤使用の米は私たちが知らぬ間に食べている可能性があるので注意が必要です。
この記事では精米改良剤使用の米の実態や問題点、避けるために必要なことを紹介しています。
・精米改良剤使用の米とは
・精米改良剤が使用されている可能性のある食べ物
・精米改良剤が使用された米を避ける方法
・安心できるお米を買う方法
※本記事では精米改良剤が使用された米を便宜上「新型プラスチック米」として紹介することがあります。
プラスチック米と精米改良剤使用の米は違うもの?
インドネシアで中国から輸入したコメに塩化ビニール製のプラスチック米が混入していたことが分かり、新聞などのメディアでも取り上げられました。(産経新聞/中国産・プラスチック米でインドネシア怒り心頭)
日本が中国からプラスチック米を輸入してしまったというような報告はありませんが、食品のニセモノや残留農薬、異物混入などのニュースが絶えない中国産の食材には気をつけるという意識を持つべきといえるでしょう。
一方で、日本で気づかぬうちに食べてしまっているかもしれないプラスチック米もあります。
それが、精米改良剤を使用した米です。
プラスチック米は中国で作られた偽物のコメであるのに対し、精米改良剤を使用した米は、液体プラスチックとも言われるプロピレングリコールを食品添加物として使用したコメで、『新型プラスチック米』とも言えます。私たちが知らぬ間に食べている可能性があるので注意が必要です。
精米改良剤使用の「新型プラスチック米」とは
「精米改良剤」とは、古くなって乾燥したコメを美味しく食べるために使用される食品添加物で、白い光沢や米独得の甘みや風味をつけることができます。
精米改良剤を使用することで、新米のように美味しく食べることができるので古米の流通促進ができる一方、消費者は不必要な添加物を摂取するデメリットがあります。
・リン酸塩 … 古米を割れにくくさせる
・D-ソルビット … 合成甘味料で新米のような甘みをつける
・プロピレングリコール … 新米のような白い光沢を出す
精米改良剤の成分の中のプロピレングリコールは実は食品添加物として幅広く使用されているため、知らず知らずのうちに口にしている可能性があります。
☆プロピレングリコール
着色料や香料などの添加物の溶剤や、カビ、細菌の静菌作用に注目して防腐剤として使用するほか、保湿性、湿潤性を持つことから、生めんなどの品質改良剤としても使用されています。生めん、いかくん製品では2.0%、シュウマイ、春巻などの皮では1.2%、その他の食品では0.60%という使用基準があります。(食品衛生の窓/ 東京都保健医療局)
スーパーに精米改良剤が使われた米が売られている?
残念ながら、過去にはプロピレングリコールが含まれた精米改良剤と称するものを精米の時に使用していても、食品添加物として表示せず販売が行われていた事実があったようです。(食品安全モニター/ P8. 精米改良剤の徹底表示義務付けを )
「精米改良剤使用の米なのに表示がされていない問題」については、国会質問にも挙がり、当時の厚生労働省食品安全部長は「もし使用されているにも関わらず添加物表示がされていない場合には食品衛生法に違反になります」と回答、
2004年12月6日には表示義務の通知文書が公式に出されており、食品衛生法に基づく表示を徹底するよう指導の強化を求めています。(厚生労働省/「精米改良剤」と称した食品添加物を使用した米の表示について)
ネット上では、「精米改良剤を使用しても表示義務がないため、スーパーの古米に使用されている可能性がある」という指摘を見かけますが、一応表示義務はあります。多少アップデートされていますので情報ソースを確かめることをおすすめします。
表示を見れば安全じゃない?精米改良剤の表記には抜け道がある
厚生労働省から添加物としての表示を義務付けられているから、精米改良剤使用の米は市場に出回ってないと安心したいところですが、実は抜け道があるため実際には使用されている可能性があります。
食品添加物を使用した米は、食品衛生法施行規則別表第3の11ロ「加工食品であって、イに掲げるもの以外のもの」に該当するため、名称等に加え、使用した食品添加物を含む旨(栄養強化の目的で使用されるもの、加工助剤及びキャリーオーバーを除く。)の表示が必要です。
さらに、食品添加物を使用した精米を原材料として使用した米飯、おにぎり等を販売する場合は、精米時に使用した食品添加物の表示も必要となります。(キャリーオーバーを除く。)
厚生労働省/「精米改良剤」と称した食品添加物を使用した米の表示について
上記の厚生労働省の告知文によると、精米改良剤を使用しても表示をしなくても良いケースが存在してしまうのです。
精米改良剤が非表示となる抜け道
1.加工助剤
2.キャリーオーバー
3.栄養強化の目的で使用されるもの
食品衛生法施行規則に従い成分表示がされている食品添加物ですが、米以外でも上記に該当する場合は表示免除の対象になっています。
プロピレングリコールは品質保持効果と関連して表示が義務付けられているので、キャリーオーバーや栄養強化目的の使用で該当する可能性は低いと考えられますが、加工助剤としての使用なら表記免除の可能性もありそうです。
「加工助剤」なら精米改良剤の表記が省略できる可能性?
加工助剤とは、食品の加工の際に使用されるが、1.食品が完成する前に除去されるもの、2.その食品に含まれる成分と同じ成分に変化し、成分の量が明らかに増えないもの、3.出来上がった食品に含まれる量が少量かつ、その成分が食品の品質に影響を与えないものを指します。
よって、ごく少量の精米改良剤(プロピレングリコール)の使用なら表示を省略できるケースも考えられます。これが表示義務がないといわれる所以です。
精米改良剤としてプロピレングリコールを使用して精米しても、仮に使用量が0.6%以下である場合、品質保持効果は発揮されないため表示が省略される可能性があります。(厚生労働省 / プロピレングリコールの表示について)
精米改良剤使用の米を避ける方法
プロピレングリコールを含む精米改良剤を使用していても、表示免除がされている添加物を私たちが確認する術がありませんが、「安すぎるもの」「大量生産のもの」を避けることで知らぬ間に口にしない選択をすることができます。
コンビニ、スーパーのおにぎりや弁当は避ける
厚生労働省の通達文には「精米改良剤を使用した米飯、おにぎり等を販売する場合は精米時に使用した添加物を表記する必要がある」とあるので、国が公式に発表するまでに掴んでいる実態としては、市販のおにぎりや弁当などに使用されているということが推察できます。加工助剤やキャリーオーバーで実際には表記より多い添加物が使用されているので、市販のおにぎりや弁当はなるべく避けたほうが安心です。
外食のご飯は食べすぎない
食の安全性を重視したい方は外食には注意が必要です。精米改良剤使用の実態は掴めませんが、炊飯改良剤と言われる業務用の加工油脂、品質向上剤は外食産業で使用されているため、精米改良剤が使用されている可能性も十分考えられます。
精米改良剤使用の米を食べる健康上のリスク
プロピレングリコールは毒性が低く、人体に与える影響が少ないといわれています。
蓄積性の物質ではないため腎臓と肝臓機能が正常な人は48時間内に分解されますが、小さな子供は大人ほど早く分解できないため、日常的にプロピレングリコールにさらされないよう、毎日食べるものや化粧品など(保湿クリームやおしりふきなど)には気を付けたいところです。
一般的に毒性が低いとされるプロピレングリコールを大量に摂取した場合はこのような副作用が報告されています。
皮膚の炎症、アレルギー症状の危険性
目や皮膚への炎症を引き起こすさまざまなアレルギーのリスクがあり。
コネチカット大学の研究では、肝疾患のある人にとってプロピレングリコールは危険な可能性があることが指摘。
またプロピレングリコールは浸透性を高めるという働きもあり、薬効を高める効果も医療面では期待される一方、有害な化学物質を浸透させ血液中に侵入させる可能性を指摘されています。
怪しい?精米改良剤が使われているか見分ける方法
最新の厚生労働省の通達によると、精米改良剤が使われている場合は、原材料名に「プロピレングリコール」などの成分名が記載されるはずですが、これまでにスーパーなどの米袋やパックご飯ではその表記を見たことがありません。
精米改良剤が使われているお米は、石油のようなにおいがする、表面がなめらかで光沢があると言われていますが、一般消費者が格付けのように毎回米をチェックする訳でもないですし、実際に怪しいと思っても確認のしようがないのが難点です。
怪しい米を見分けることより、市販のおにぎりや弁当、パックご飯、安すぎる外食などを避けるほうが、精米改良剤使用の米を避ける行動になります。
精米改良剤が使われていない米の選び方
精米改良剤の表示義務がない量で使用されている場合は、もはや私たちに確認する術がないため、精米改良剤が使われていないお米を選ぶ方法も覚えておきましょう。
1.顔が見える生産者のお米
信頼のおける生産者からのお米を選びましょう。農家のこだわり(農薬、化学肥料不使用など)を知ることで安心して食べることができます。
2.収穫から1年以内の国産米を食べる
あえて外国産米を選ぶ人は少ないかもしれませんが、大事なのは国産米の収穫した年の確認をすることです。
店頭に並んいる米袋に記載されている「産年」という項目で、収穫年を確かめることができます。
3.ブレンド米を避ける
ブレンド米などの一部は産年の表示義務がないため、書かれていないことがあります。
また古米なのか、新米なのか、もしくは両方のブレンド米なのかを知ることができません。
古米をつかむ可能性が高くなるので、よほどこだわりがない限りブレンド米を選ぶのはおすすめしません。
4.自分で精米する
近くにコイン式精米機などがないと難しいかもしれませんが、お米を自分で精米する方法もあります。
おすすめの安心できるお米の選び方
安全性の高いお米を食べてみたいという方は、以下のポイントを抑えたお米を選びましょう。
当サイトでご紹介しているお米は、生産者または栽培地や栽培方法の情報公開があるかを重視しています。
農薬や化学肥料の使用状況、栽培環境、また有機米と慣行栽培米を栽培している場合は機械の清掃状況や、製品が混同しないように区別して保管されているかなど様々な項目をクリアして国が有機(オーガニック)認証を農家の方に与えるのが有機JASです。
有機JAS認証や有機(オーガニック)栽培について知りたい方は「有機、オーガニック、無農薬の栽培方法の違いを知って野菜を選ぼう」をご覧ください。
【安全性の高い米】通販で買う
すぐに購入できる手軽さを重視したい方は通販がおすすめです。
おすすめ米1.庄内のめぐみ屋の「つや姫」
山形県庄内平野は日本有数の穀倉地帯で、お米の理想郷とも言われる地。
庄内のめぐみ屋で扱う「無農薬あいがも栽培」で育てられたお米は有機JAS認証を受けた有機米です。
生産者である菅原弘行さんは米作りの達人として小学5年生の教科書にも取り上げられており、有機無農薬あいがも農法を1980年代に確立した有機米栽培を牽引する米農家の一人とも言える方。
日本穀物検定協会による令和4年産米の食味ランキングで最上級の特Aを獲得した「つや姫」は甘くてもちもちの食感が好評です。
おすすめ米2.米屋清米衛の「コシヒカリ」
山間地の寒暖の差や、山から流れ込む冷たい水がある米作りに適した鳥取県中部倉吉市。契約栽培したお米を扱う米屋清米衛では有機JAS取得のコシヒカリがおすすめです。
米屋清米衛は有機農産物小分け業者の認定を受けており、殺虫剤等の薬剤を使用できないため精米工場内で混入することもなく安心。
オーガニックの有機肥料を使用し、農薬・化学肥料不使用で大切に育てられたお米だからこそ大量生産ができないので、入荷数量が少なかった令和5年産米は購入数を2袋までと限定されていました。
おすすめ米3.越後米蔵商店の「コシヒカリ」
新潟の地元名産物を扱う越後米蔵商店。中でも有機JAS認定を取得した有機栽培米は魚沼産のコシヒカリとして頂点に君臨するような特別なお米です。
信濃川と阿賀野川という水量豊富な大河が通る越後蒲原平野は日本有数の穀倉地帯で、有機農法を知り尽くした熟練農家の方によって特別契約栽培されています。
日本穀物検定協会が行う食味ランクにおいて、常に特A・Aランクを取得する新潟県産のコシヒカリは、自宅はもちろん贈答用にも喜ばれます。
おすすめ米4.ほんだ農場の「コシヒカリ」
ほんだ農場はEM農法とよばれる微生物を発酵させて肥料に利用するという独自農法で有機JAS認証のお米を生産する農家さんです。
生産者の本田さんはEM菌を使った有機栽培の啓蒙と指導を行い、東京農業大学の経営者賞を受賞、有機JAS米のプロとして活動されています。
ほんだ農場の有機栽培米のコシヒカリは「天地の誉」は25年以上、「土の詩」は6年~16年間、化学合成肥料を使用しない田んぼから収穫されたもの。手間ひまかけた安全性の高いお米はその分割高ではありますが、特に健康意識の高い方に人気の注目のお米です。
【安全性の高い米】ふるさと納税を使う
ふるさと納税を活用している方は、その年の有機米を選ぶことができます。
「食べチョク」や「ポケットマルシェ」など農家の方と直接つながれる産地直送サービスを使えば生産者の方を知ることができるので、安心できる有機米を探すことができますよ。
森ファーム・里山の森ぽっぽ「コシヒカリ」
「小さな子どもたちが食べても安心」を目指してお米やそば、野菜の生産を行う茨城県『里山の森ぽっぽ』では、有機JAS認証のコシヒカリを生産しています。
栄養価の高い発芽米を有機で食べられるのはめずらしく、栄養価は残した精米方法なので玄米が苦手という方も食べやすくなっているのが特徴です。
寄付金額:14,000円(5kg)
鴨庄村のりょう農園「コシヒカリ」
「自然にも人にもやさしい作物を育てたい」という思いで脱サラし、兵庫県丹波市で自然栽培を行う『鴨庄村のりょう農園』では、農薬・肥料、除草剤、農業用資材マルチを一切使用しない、自然栽培で育てられたお米を生産しています。
コシヒカリは、玄米、2分、5分、8分搗き、白米と好みの精米方法を選ぶことができて、こだわりの強い方にもおすすめです。
寄付金額:26,000円(9kg)
【安全性の高い米】食材宅配サービスで買う
食の安全にこだわりのある食材宅配サービスでは、農薬の心配のない野菜や添加物不使用の加工品を扱うイメージですが、有機JAS認証のお米を割引価格で買える仕組みがあるサービスもあります。
食材宅配サービスの「ビオ・マルシェ」にはお米会員というものがあり、毎回216円(税込)の割引が受けられ、食味検査で高得点のコシヒカリを厳選して届けてくれるサービスがあります。
割引商品の例(税込価格)
有機特選コシヒカリ 白米 5kg 4,363円→4,147円
有機特選コシヒカリ 玄米 5kg 3,942円→3,726円
定期的に有機米を頼むなら割引を受けられるビオマルシェのほうがお得になる可能性があります。
また、なんといっても注文後に精米をしてくれるのがお米通にも嬉しいポイント。注文してから精米、袋詰めするため風味が落ちず、精米したての美味しい有機米が食べられるのが特徴です。
お試しセットで味を確かめることができますよ。
ビオマルシェは会員制の食材宅配サービスですが、いきなり会員になるのに抵抗がある方は1,500円で段ボールいっぱいに野菜が届くまとめ<精米改良剤使用米の見分け方>
精米改良剤使用のお米を知らぬ間に食べていることがないよう注意しましょう。
- コンビニ、スーパーのおにぎりや弁当は避ける
- 外食のご飯は食べすぎない
- 古米を避ける
外食で精米改良剤使用のご飯をすべて避けるのは難しいかもしれませんが、コンビニやスーパーなどの弁当やおにぎりなどのお米はなるべく避け、国産、有機JAS認証米または有機栽培された新米を選ぶのをおすすめします。
美味しくて安全性の高いお米は農家の方々の並々ならぬ努力の上に収穫される、年に一回の恵みです。
毎年同じお米を食べることで応援の気持ちが届きますので、あなたにとってのお気に入りのお米が見つかれば幸いです。